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「本のことども」by聖月

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2006年 12月 17日

〇「ヒステリック・サバイバー」 深町秋生 宝島社 1491円 2006/11


 今年2006年6月に著者深町秋生氏と渋谷で飲んだことは、こちらの超オフ会のことども:フカマチック・ナイトの記事に書いた。クリックしてもらえれば、どういう経緯でどういうメンツでどういう風に飲み食いしたかはわかるのだが、そんなの面倒だという方のために概略を記すと、このミス大賞受賞者絡みの私的な飲み会(深町氏が山形から上京するから誰か集まらんかなあという主旨)で、美貌作家のK様、イカサマ博打作家のH氏、宝島社の担当嬢、その他通行人の方々と飲んだわけで、初めてお会いする深町氏と渋谷のハチ公に跨って落ち合い、店までの道々、次の作品の構想を聞きながら、学園物という風に聞き及び、店に着いたら誰も居なくて、だんだんと参加者が集まりだし、話に花が咲き始め、H氏ことハセベバクシンオー様が作家の縁起担ぎの話を持ち出し、そういえばと深町氏を指差し“この人は執筆中は風呂に入らないらしい、そういう縁起担ぎって汚いよね、臭いよね”と言い出し、みんなが大きく頷きながら、深町氏との距離を保ち始めたのは、今まさに彼が執筆中であったからに他ならず、じゃあと美貌作家のK様と宝島社の担当嬢が次の新作の帯は“風呂に入らずに書き上げた、入魂の一作”と勝手に決め付けたわけで、その発売を今か今かと待っていた評者だったのだが、中々出版に至らずやきもきしていたわけで、そのわけは出版社が深町秋生の本を出すのを忘れていたわけで、なんで忘れていたかというとバチスタ海堂の第2弾を出すことにやっきになっていたらからで、結局思い出して出版したのはいいが、肝心であるところの帯の文句のことは既に忘れられていて、“戦場と化した学校、改造ガンの乱射、炸裂する催涙弾!筋肉バカvsオタク!いじめ、対立、苛立ち・・・すべてをブッ飛ばす青春ノワール”として出してしまった経緯は、聖月様だけが知っているわけであり、以上、これまで出てきた人物や発言は架空のものであり、実在の個人や団体とはなんら関係はない評者のたわごとなので悪しからず。

 ということで学園物である。著者からもそういう風に聞いていた評者である。あと、人がたくさん死にますとも言っていたよなあなんて思いながら、プロローグを読み始める。そのプロローグで、生徒や教師12名が死亡し、20数名が重軽傷を負うわけで、いわゆる校内銃乱射事件で幕を開けるわけである。米国内での話である。

 その事件に居合わせた主人公少年が、日本に帰国してからの学園風景が本編の話の軸で、こういう話の展開を帯から想像するに、今度はいつ乱射事件や学園立て籠もり事件が発生するんだろうと思いながら読んだのだが、実はこれ青春物であった。スポーツも恋愛も出てくる青春物であった。ただし「飛び出せ!青春」(古いか?)みたいな爽やかなものを著者が描くわけもなく、「愛と誠」(これも古いか?)のあの暗い世界に心と力の暴力が内包されたような雰囲気が、やはりノワールなのである。

 オタクが出てくる。スポーツバカが出てくる。ゴシックな女生徒が出てくる・・・のはいいが、実はこういう人たちの裏側にある風景を、オタクでアナーキーな著者ほど評者は理解していないので、少し行動力学、言い換えれば物語の展開の蓋然性についていけなかった部分もある。っていうか、評者は世の中を知らな過ぎなんだよなあ。若者の文化なんて知らんもんなあ。

 冒頭で渋谷という地名に触れたが、最近になって渋谷あたりでギャルサーなる文化が芽生えていることを知ったのが半年ほど前。なんで知ったかというと、ブログへのトラックバックスパムに、しつこく“渋谷のギャルサーなんたらかんたら・・・”というのがくっついてきたからで、そういう場合、相手の記事の内容を読むことなくTBを消しちゃう評者は、つい最近までギャルサーというのは男の文化かと勘違いしていたくらいである。渋谷のギャルを漁るイケメン男の極意を教えるブログ記事かと思っていたのである。というのも、普段からテレビを観ないせいだと思う。

 先日、知人たちと大いに飲み明かしているときに、テレビにガングロ制服女たちが集団で現れて“あれ?まだガングロって法律で禁止されていないの?っていうか、廃れたんじゃないの?絶滅したんじゃないの?”と聞き及んだところで、まさにそれこそがギャルサークル、略してギャルサーと知ったのである。だから、多分、以前の評者だったら、本書にギャルサー文化が出てきたとしても(実際には出てこない)理解に苦しんだはずだし、そういう意味でゴシックやオタクを知らないわけじゃないけど、理解できなくてゴメンネ深町大先生(^O^)/

 しかし、深町大先生が風呂に入らずに書き上げた、入魂の一作!読むべし!なのである。ただし本人は“執筆前に風呂に入らないんじゃ!ボケ!書き終わったら入るんじゃ!アホ!それも一日単位の話で、飯が先か、お風呂が先かのそんなレベルじゃ!チワワ!”と言っていたような気がしないでもない。(20061217)

※前作『果てしなき渇き』より爽快感がアップ。でも評者は前作のような暗黒世界は好きよ。(書評No684)

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by kotodomo | 2006-12-17 13:34 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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