2007年 04月 23日
これまで評者が読んできた樋口作品と比べたとき(この作品より前の作品も、後の作品もごっちゃに読み進めているのだが)、いわゆる新しい作風に挑んだ意欲作と言っていいだろう。爽快青春ミステリーとか樋口風ハードボイルドというのが、大体この作家の持ち味なのだが、本書の場合は・・・海外小説風??? 海外小説風って何?自問する評者。でも仕方ない。この作品の風味に対するボキャブラリーを評者は持ち合わせていないのである。『犬博物館の外で』ジョナサン・キャロルや『七つの丘のある町』トマス・H・クック、『名無しのヒル』シャイマス・スミス、『白い心臓』ハビエル・マリアス・・・それらを読んだときの感じと一緒かな。確かに物語はそこにあるんだけど、じゃあ、なぜ作者はその物語を読者の前に提供したのか、そこんとこがわかんないような淡々とした欧米的筆致みたいな・・・まあいい。 場所は、とある島国の共和国。主人公はそこに駐在するCIA。その他の登場人物も現地人か欧米人&ODA絡みでやってきている日本人もいるにはいるが、それはまあ読者サービスみたいなもんで(ついでに言えば現地のお偉いさんが“ソニーの電気釜”を本気で手に入れたいみたいな話も読者サービスのなのだが)、とにかく淡々とした海外小説を読んでいる雰囲気で物語は進む。そこにはミステリー性も文学性もサスペンス性もとにかく“~性”と呼べるものは何もなく、近い将来、現在の大統領なき後に想起される事態に向けて、物語がただ静かに進んでいくだけなのである。 日本人には、こういう作品を書くのは難しいだろう。難しいのだろうけど、だからって挑戦しなくてもいい作風でもある(笑)。(20070422) ※中々に奥深い作家ではある。(書評No711) 書評一覧 ↑↑↑「本のことども」by聖月書評一覧はこちら
by kotodomo
| 2007-04-23 14:58
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