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「本のことども」by聖月

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2007年 12月 11日

◎「遊戯」 藤原伊織 講談社 1575円 2007/7

◎「遊戯」 藤原伊織 講談社 1575円 2007/7_b0037682_10314729.jpg 既に亡くなった作家の作品といえば、まあ夏目漱石とか太宰治なんかもそうなんだけど、そうじゃなくって・・・そう、評者の場合、6年ほど前から今ばやりの(?)読書を始めたわけで、そんな中で気に入って読んだ稲見一良なんかが既に亡くなった(1994年)作家だったりしたわけで・・・でもねえ、藤原イオリンなんて、目の前で死なれてしまったような気がして、本当に淋しいのだなあ。『テロリストのパラソル』を読んで感動して、その後出る新作が気になって、講演会なんかも聴きに行って、質問は?と司会者が問うのに積極的に手を挙げて“藤原さんの作品には、酔っ払いのハードボイルド主人公がよく出てきますが、やはり御自分を投射されているんですか?”なんて質問に苦笑されて“いやあ、そういうわけでもないんだけど・・・”なんて、丁寧に回答していただいたのは大切な思い出で、一応、なんか直接お話したことがあります、なんていう貴重な体験で、ああ、それなのにそれなのに、癌なんかにおかされてしまって、手記も立ち読みだったけど読んで、今年に入って訃報・・・(ToT)

 本書『遊戯』は、そんな作者の、完結しなかった連作短編集である。ハードボイルドな男性主人公と、スラリとした女性主人公、その二人の視点が交互に織り交ぜられた連作集である。ただ、未完といいながらも、そのひとつひとつの短編自体はそれなりに短編として完結しているし、その文章の中に、確かに藤原イオリンという作家がいる。遺してくれたものが、そこにあるのだ。未完ながら、重厚ではないながら、本書『遊戯』の中に、文章に、頁を繰れば、やはりそこにイオリンの香りがあるのだなあ。

 何ゆえに未完かといえば、連作シリーズの途中から謎の男が登場し、結局、そいつは誰か?ということが未完であることを示しているし、でもね、そんなのはいいんです。そういう未解決のパズルのピースが残されることもひとつの文芸手法と捉えれば、未完であることは関係ないのです。未完といわれようが、イオリンフリークは読むべし。ここに、イオリンは確かにいるから。イオリンの香り、残り香を懐かしく抱きしめるべし。(20071209)

※『テロリストのパラソル』も、いつかどこかでまた再読したいなあ。(書評No760)

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by kotodomo | 2007-12-11 23:58 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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