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「本のことども」by聖月

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2008年 06月 09日

◎◎「無頼の掟」 ジェイムズ・カルロス・ブレイク 文春文庫 810円 2005/1


 色んな面白要素が詰まったエンタメ小説である。冒頭の強盗劇→監獄物語→脱獄劇→一転してのロードノヴェル→クライム小説、そして背景にある追跡劇。こんな面白い小説、読まないのは勿体無い。翻訳物は読まないという人は多いが(世のブロガーたちの多くの傾向)、そんなのは勿体無いですよ。せめて、このミスランクイン作品で自分に合うかも♪そんな小説からでもいいからお試しくださいませ。まあ、本書『無頼の掟』からでも。

 本書の一番の特徴は、まずその読みやすさにある。冒頭の銀行強盗のシーンから、ハリウッド映画のワンシーンが始まるような感じ。双子の叔父を銀行の外で車を待機させ待つ主人公。ちょっとしたハプニングから、警察に拘留。強盗の共犯の嫌疑は決定的ではなかったのだが・・・拘留中の予期せぬ出来事により、脱出不能と言われるプリズンへ・・・。

 普通の小説だと、最後のワンシーンで脱獄成功めでたしめでたし、そんなところまで引っ張りそうなものだが、その脱獄劇も物語の前半の一部でしかない。

 実は、評者、前半途中まで読み間違っていたのだが、本書は現代アメリカの話ではなく、1920年代の古き良きアメリカ西部の物語。だから奴隷制の名残りや、金や石油に沸く町の後半のシーンなど、いかにも当時のアメリカらしい西部らしい風景が、段々と映画のシーンのように展開されていく。

 そうそう、書き忘れていました。青春物語、恋愛物語でもあるのですよ。とにかく読んでいて思いだすのが、映画「明日に向かって撃て」、そしてなぜかアラン・ドロン&リノ・バンチェラ「冒険者たち」も。後者は、コンビ、交情、そんなところで連想してしまう評者なのである。

 こういう面白い小説に、これ以上の紹介はいらない。あとは、読者と出会いの問題なのである。出会いたいと思うかどうかなのである。(20080605)

※こりゃあ、『荒ぶる血』も近々に読まなきゃである。(書評No807)

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by kotodomo | 2008-06-09 08:48 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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