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「本のことども」by聖月

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2008年 07月 03日

〇「海島の蹄」 荒山徹 祥伝社 1680円 2008/3

〇「海島の蹄」 荒山徹 祥伝社 1680円 2008/3_b0037682_9332284.jpg 4つの中編が収められた朝鮮半島物語。荒山徹ファンならご存知の通り、時代は当然豊臣秀吉の活躍前後である。宗主国である中国(明)、朝鮮出兵に拘る倭国、そんな狭間の朝鮮半島を描いた作品集である。

 『高麗秘帖』の書評でも書いたのだが、豊臣秀吉の目的は、朝鮮を属国にすることではない。明に攻め入りたいと思い、その通り道である朝鮮に、道を通らせろ!通らせないなら征伐するまでだ!と、なんとも勝手な出兵なのである。それを時代背景に書かれた4編「海島の蹄」「真説・李舜臣」「妖説・李舜臣」「三別抄暴滅」。

 異色なのが「妖説・李舜臣」。「真説・李舜臣」では、「高麗秘帖」の焼き直し(ポジフィルム的焼き直し)ともとれる海神・李舜臣の生い立ちと活躍を描いているが、妖説では一転、悪しき道徳観を抱く李舜臣の策謀と欲望を描き、ネガフィルム的に焼き直しているのである。これまので荒山作品では、英雄だったあの人物が、一転悪党なのである。

 まあ、それはさておき、最近重厚壮大な物語を書かなくなった荒山徹。こういう焼き直し中編集も悪くはないのだが、今一度、「高麗秘帖」「魔風海峡」「魔岩伝説」に並ぶようなでっかく重い物語を書いてほしいものである。(20080627)

※「三別抄暴滅」は、読んでいてちょっと疲れた作品。物語というより、とある朝鮮史という感じで説明に過ぎる。(書評No814)

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by kotodomo | 2008-07-03 09:33 | 書評 | Trackback | Comments(0)


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