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「本のことども」by聖月

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2006年 01月 13日

◎「さあ、気ちがいになりなさい」 フレドリック・ブラウン 早川書房 2100円 2005/10


 ただ、昔大好きだった星新一の訳ということで読み始めたのだが・・・大収穫(^O^)/面白い(^O^)/でも・・・大きな勘違いに気付いた評者なのであった。それも二つも(^^ゞ

 まずは、村上春樹がジョン・アーヴィングなんかを、自分が好きだから、現代人に紹介したいから訳したのと同様に、星新一も今の人たちに読んで欲しく新訳したのだろうと思っていたのである。そこで2つの勘違い。ちょっと“星新一 – Wikipedia”を見てみよう。

星 新一(ほし しんいち、本名は星 親一。1926年9月6日 - 1997年12月30日)は日本の小説家、SF作家。
東京市本郷区曙町(東京都文京区千石)に生まれ育つ。父は星薬科大学の創立者で、星製薬の経営者星一。本名の親一は父のモットー「親切第一」の略で、弟の名前の協一は「協力第一」の略。
多作さと作品の質の高さを兼ね備えていたところから「ショートショートの神様」と呼ばれ、生涯で1001編以上の作品を残す。
(←詳しく見たい方はクリックを)

 おわかりだろうか?生涯で1001編以上の作品を残す・・・で、ん?と思い、生年・没年で、やっと、もうお亡くなりになっていたんだ、そうだった、忘れていた!と思い出した評者なのである。本当に、元来ファンである。多分、亡くなった当時も大きく記憶に刻まれたはずなのである。ところが、そのこと自体もう忘れてしまっている43歳老眼の評者なのである。まず、その勘違いがひとつ。

 そして、ということはだ、星新一が現代の読者にあてた新訳でもないということに気付く。それが二つ目。じゃあ、いつの訳なのかというと、これは巻末に書いてあって、1962年の出版とある。評者の生年である\(◎o◎)/!なんと、評者がオギャーしてシッコウンコぶっかましていた当時の本の復刊なのである。そして、その後、中学2~3年時に、星新一のショートショートに嵌まった評者なのだが。それにしても・・・本書の内容は新鮮である。

 まだ、もう少し星新一への嵌まりを語りたい・・・その中学2~3年時、とにかく氏の本は文庫化されているものは全部片っ端から読んだものである。もう読む本がなくなって、ショートショートでも小説でもなんでもない『進化した猿たち』に手を出したくらいである。その中でも一番心に残っている作品があって・・・30年以上前に読んだ小説の内容書いてもネタバレじゃないということで。

 『午後の恐竜』なのかなあ、違うのかなあ。とにかく、子供が“パパあ!外見て!恐竜だよう♪”とはしゃぎ始める。何言ってんだかと外を見るパパの目にも恐竜が。ただし、それは触れない映像。そういうパノラマチックな映像が、全世界の戸外に現れる。そして、原始人が出現し、道具などを使い出しなんていう映像に・・・要するに地球の歴史の大パノラマの出現なのである。人は自分が死ぬとき、それまでの映像を走馬灯のように見るという。実は、あとになってだんだんわかってくるのだが、このとき既に最終兵器のボタンが押されており、戸外のパノラマは、死に行く地球自身が映し出した走馬灯であった。そんな話。なんか、スケールもアイディアもでかくて、それまで読んだ氏の作品群の天使と悪魔とか、N氏がどうしたとか、ノックの音がシリーズだとか、そういうものとは違ったショートショートの描かれ方にショックを受けた覚えがある。

 本書『さあ、気ちがいになりなさい』も、そういった系統の作品群が多く収められた短編集。ショートショートよりは少し長いので、短編集だろう。最初の「みどりの星へ」や「ぶっそうなやつら」などは、星新一を知る者にとっては、意外に単純な短編なんだけど、それ以外は粒ぞろいの異色短編集である。「おそるべき坊や」なんて、人類を救った少年の話で、ああそうなの、なんて読み終えようとすると、最後にガツン、ふふふ、そうだったの、って感じだし、「ノック」なんか、いかにも星新一的でありながら、その構成が優れた作品である。“地球上で最後に残った男が、ただひとり部屋のなかにすわっていた。すると、ドアにノックの音が・・・”さあ、これを膨らませて短編を作りたまえ、そう言われて、あなたはどんな物語を捻り出せるかな?フレドリック・ブラウンが捻り出した答えは・・・傑作である!!!

 本書を楽しめた方なら、◎◎『壜の中の手記』ジェラルド・カーシュもお薦めしておこう。まあ、騙されたと思って(^.^)(20060113)

※最初2100円は高いなあと思ったが、読んでみて納得の価格。(書評No615)

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# by kotodomo | 2006-01-13 23:08 | 書評 | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 13日

◎◎「暗礁」 黒川博行 幻冬舎 1995円 2005/10


 エンターテイメント小説の極北と言ったら言いすぎだろうか。本書『暗礁』のような、すこぶる面白本を前にすると、文学性とか描写力とかそんなことに拘泥するのが馬鹿らしくなる。それだけ、単純に面白いのである。みんな楽しめ。読むべし、読むべし、べし、べし、べし!!!である。

 本書は『疫病神』『国境』に続くシリーズ第三弾(シリーズ名がはっきりしないが、評者的には疫病神シリーズかな、巷的には二宮・桑原コンビシリーズかな)ながら、前2作に頼らない単独の面白さがある。だから、いきなり本書を読んでも全然構わないし、既に文庫化されている2作を試してから本書にとりかかってもいいだろう。とにかく最終的に本書『暗礁』を読むべしで、読んでくれさえすれば、この文章を書いている甲斐があるというものである。こっそり言うと、黒川博行、図書館でもさほどの人気はないはずで、興味のある方はいますぐ予約するべし、するべし、べし、べし、べし。

 本書は、自称建設コンサルタントの二宮と、イケイケヤクザの桑原が繰り広げる、関西弁ワールドなエンタメ小説である。二宮の実際の仕事は建設現場の前捌き。要するにヤクザや右翼に工事が邪魔されないよう、前もって裏組織に渡りをつける仕事である。堅気ではあるのだが、死んだ父親は組織の人間。だから、ヤクザに対して口で張り合える免疫はなくもないのだが、結局は腕力なしのヘタレなのである。そのヘタレが、イケイケヤクザの桑原にイジラレテ、ヘトヘトになってトホホになって、それでも生き延びるダイハードな物語である。ヘタレダイハードなのである。一方、イジルほうの桑原はイケイケである。とにかく立ち止まらない。ズイズイ前に進み、後戻らない。だからイケイケなのである。ズイズイ前に進みながら、二宮を引き摺って離さないので、二宮はヘトヘトのトホホのヘタレにならざるを得ず、結局桑原=疫病神なのである。

 今回は、その桑原から出来麻雀の代打ちで小遣い稼ぎの話が。聞いた二宮、何しろ半年振りの疫病神の声だったので、過去のいきさつも喉元過ぎており、そのくらいだったらと引き受けたのが運のつき。卓に混じっていた警察官の贈収賄の事件に絡まり、放火事件に絡まり、工事現場で殺されそうになり、隠れていようと思ったら桑原に引き摺られて沖縄へ飛び・・・とにかく、二重にも三重にも面白い。前回は、北朝鮮を冒険したコンビだが、今回は沖縄の冒険へ。そこらへんの作者の展開や、絶妙なかたちでの観光地沖縄の描写の挿入が、読む者を飽きさせない=エーターテイメント。

 それと、なんだかんだ言っても、このシリーズの一番の読みどころは、豊富な二人の会話シーンにあるだろう。漫才より奥の深い二人の関西弁会話が心地良く、真面目な会話なのに吹き出す箇所も少なくない。全然、仲がいいわけではない。片方は片方を利用するだけ利用しようと、ヤクザ言葉を撒き散らし、片方は出来れば逃げようと思いながらもつい減らず口をたたく。“お前も男やったら・・・”“僕、生まれてこの方、男らしくありたいと思ったことはないです”みたいな。そして、あまりに二宮が口で抵抗すると、桑原はもう“お前”と呼ばない。“二宮君、今の言葉聞こえんかった。もう一度言うてみい”みたいな。

 カラクリミステリーとしても秀逸。謎はないのだが、色んなことが裏のカラクリで収斂していく手法も見事。工事現場のトラブル、贈収賄事件、放火事件・・・。400頁超の上下二段組のボリュームながら、その重量感にも嬉しさを感じる痛快小説。読後感は痛快爽快・・・読むべし!!!(20060113)

※昨年10月の出版なので、当たり前だが、もう本書が今年の年末に語られることはない。2005年のエンタメ本の押さえ本(書評No614)

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# by kotodomo | 2006-01-13 12:00 | 書評 | Trackback(3) | Comments(8)
2006年 01月 12日

大□小□・□天・□気


上の娘5年生は、実は勉強が好きである。
算盤も好きで、ピアノも好きである。

今度の冬休みも、塾休んで遊びに行こうって誘っても、塾のほうがよいという。
じゃあ、塾から帰ってきたらパパと遊ぶかというと、ピアノや算盤をしている。
じゃあ、ピアノや算盤の合間にパパと遊ぶかというと辞書を片手にナンクロをしている。
嫁さんと二人でナンクロ三昧。

で、その二人がウンウン唸っている。
ナンクロをよく知らないパパが覗くと
“大□小□”の□に入る字がわからないという。
大同小異じゃないの?というと、□の中に入っているナンバーが同じなので同じ字が入るという。
他に□天、□気にも同じ字が入るという。

パパは天才なので、10秒眺めていたら、答えわかってもうた。
“寒”だろ。大寒小寒、寒天、寒気だろ。

所詮、彼女たちの努力なんて、そんなもんだ。天才は努力に勝るのだ(^^)v

# by kotodomo | 2006-01-12 08:18 | メモる | Trackback | Comments(2)
2006年 01月 11日

最後に近い図書館利用のことども


2月1日に静岡県駿東郡清水町に引越し(^O^)/
ほとんど、三島市とイメージしていただいてよいでしょう。

ということで、洗濯物が荒川区の図書館利用も最後に近づいてきました。

今週末取りにいく予約本は

『摩天楼の怪人』 島田荘司
『暗い国境線』 逢坂剛
『男殺しのロニー』  レイ・シャノン
『G.I.B.聖なる死神の伝説』 沢井鯨
『インストール』 綿矢りさ姫 文庫本収録の「You can keep it」目的   
『クライム・マシン』 ジャック・リッチー

もう予約はしないと年末誓ったのだけど、沢井鯨に思わず反応。
荒削りのまま成長しない作家、でも好みの作家。

# by kotodomo | 2006-01-11 10:32 | メモる | Trackback | Comments(0)
2006年 01月 10日

〇「金春屋ゴメス」 西條奈加 新潮社 1470円 2005/11


 本書を読む前から、自分が江戸時代に生まれたら、どんな生活をしていたんだろう?なんて考えたことがある。普通考えないか?考えない?あ、そう。でも評者は考えたことがあるのである。問題は、どういう家柄に生まれるのか?そこらへんから想像の行く先は変わってくるのだが・・・

 例えば、自分の望みが叶うなら、浅草寺の流行りの団子屋でも饅頭屋でも反物屋でもなんでもいいから、とにかく遊んで暮らせる三代目若旦那かなんかで、飲んで遊んで吉原で買って・・・なんて考えても全然面白くなさそう。飽きがきそう。じゃあ、上級武士の長子かなんかで、文武に頑張って・・・なんてのもつまらなそう。いっそ農民に生まれて、田畑を耕し、重い年貢にヒイヒイ言って・・・そんなの絶対イヤ!

 いや、よく考えたとき、お江戸じゃなくて、薩摩に生まれると考えたほうが輪廻的に正しそうな気がする。となると、中流サラリーマンの息子たる評者は、中流武士の長子として生まれるわけで、それなりに普通に歩んでいき、島津斉彬の右腕と目されるも、いつの間にか尊皇攘夷とか倒幕とかそういう渦に巻き込まれ、維新を向かえ諸外国の発達した文明を視察に行き、明治政府の要職に就き、暗殺されるの?イヤだな。

 まあ、そういう妄想はさておいても、江戸時代なんかに生まれたとしたら、日々の楽しみって想像がつかない。今みたいに本は溢れていないし、ブログはないし、ロックもパンクもないし、とんこつラーメンはないし、菜の花マラソンとかバスケットとかスポーツもないし、柔道や剣道は性に合わないし・・・儒学の道でも究めっかなあ、そんときは。暇潰しに学問するしかねえべ、そんときは。まあ、以上は、皆さんも、たまにはこういう想像の翼を羽ばたかせてね、っていう無駄話(^.^)

 本書『金春屋ゴメス』は、現在の日本国の中に江戸という属国もしくは独立国が存在するというお話である。そして、江戸には二度入国できないという掟がある。だから、入国を許可され江戸に入った者は、一度江戸から出てしまうと再度入国は出来ない。ところが、本書の主人公は江戸生まれ。江戸に入国した両親の元に生まれ、しかしながら両親共々日本へ出国。勿論、両親は二度と江戸には入国できないが、本人は・・・そう、出国はしたことはあるが、入国はしたことないので、江戸に入れる資格を持ち、そんな彼の元に、江戸から呼び寄せの依頼が舞い込む。それが話の序盤。後は、今の日本の中に位置する古き良き時代を湛えた江戸が舞台になる。彼が呼び寄せられた理由は?そして話は謎解きに・・・。

 非常に面白い設定なのだけど、どこか入り込めなかったというのが、評者の正直な感想。少し無駄で浅い描写が多すぎるのかな?それと、謎解き部分は、本人の幼い頃の記憶が甦ることだけが頼りなので、“あ!思い出した!”を待つしかないという変なミステリー性を持つからかな。でも、ほのぼのとした雰囲気には好感が持て、さすが第17回日本ファンタジーノベル大賞受賞作ではある。8月の受賞のニュースから、評者も出版を待ちわびていた。この手の作品が好きな方にはお薦めかな?では、どの手の作品か、過去の受賞作家を見ていこう。聖月っちって、なんて親切なんだろう。なんて、痒いところに手が届く配慮をするんだろう(笑)。ただし、評者が、ああこの人も、なんて思った作家のみの紹介ね。

 昨年が越谷オサム『ボーナス・トラック』、その前が『太陽の塔』森見登美彦、他に小山歩『戒』、畠中恵『しゃばけ』なんてどうや?山之口洋『オルガニスト』に池上永一『バガージマヌパナス』なんて好き?おお、佐藤哲也『イラハイ』に南條竹則『酒仙』もそうなのね、北野勇作『昔、火星のあった場所』この人もここの出身かあ、なんと鈴木光司も『楽園』で、へぇー、ということで、評者はその他の作家は森見登美彦と佐藤哲也の受賞作以外の小説しか読んでいないが、畠中恵や小山歩なんて好きな人どや?(20060107)

※2006年最初の書評が1月10日になってもうた。ちなみに去年は1/10には書評No458  ◎「死の笑話集」 レジナルド・ヒルを、1/7には書評No457  ○「象と耳鳴り」 恩田陸を、1/3には書評No456  ○「Fake」 五十嵐貴久を、そして初っ端が1/2の書評No455 ◎◎「いとしのヒナゴン」 重松清なわけで、今年は出遅れておりまする。(書評No613)

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# by kotodomo | 2006-01-10 14:11 | 書評 | Trackback(8) | Comments(2)